民話|鬼のつめ

まんが日本昔ばなしにもなっている「鬼のつめ」は、栃木県真岡の話となっていますが、実は益子町にある當山、圓通寺が舞台となっています。
 

あらすじ

昔、金貸しと米屋を営む強欲ものの婆さんがいました。この婆さんは、村人から穀物を買い取るときは「買いマス」という大きなマスで量り、物を売るときは「売りマス」小さなマスで量って売っていたので、村人からも嫌われていました。

そんな婆さんも、寿命でとうとう死んでしまいます。そこで、お寺の和尚さんが婆さんの葬式を担当することになりましたが、葬式の前夜になると、和尚さんのところに赤鬼と青鬼がやってきました。

鬼達は地獄から来たということで、婆さんは地獄行きが決まったから余計な手出しはするな、と和尚に警告します。しかし、和尚は自分が行かねば葬式にならぬと断固拒否し、お経で鬼を追い払います。

葬式当日、お棺を運んで歩いていると、突然強い風が吹いて和尚の経文がさらわれてしまいます。すると空に黒雲が現れて、そこから大きな鬼の手が出て来て婆さんの棺桶を持っていこうとします。和尚は必死で棺桶にしがみつき、空に釣り上げられながらも婆さんを取り戻そうとします。

村人は「あんな強欲婆さんなのだから地獄からのお迎えだってかまうことはない」と思いましたが、和尚が「死人に罪はない」と説き伏せ、村人に経文を大きな声で読むように言います。1人の娘が言う通りにお経を読み始めると、他の村人も続いてお経を読み始め、ついに鬼はまいって棺桶を手放し引き上げました。その棺桶には鬼の爪がささったままでした。

空から地面に落ちながらも、どうにか無事だった棺桶の中には、安らかな死に顔の婆さんがいて、村人はどんな人間も死ねばみな同じだと痛感しました。